「わっ、寝ちゃった!?」


ハッと目が覚めたニカは慌てて上体を起こす。横を見れば子ギツネを膝の上に乗せて本を読んでいるレゼの姿があった。


「まだ日も暮れてないし、大丈夫だと思う」

「そっか、良かった…。って、これレゼのよね、ありがとう!寒くなかった?大丈夫?」

「別に全然平気」


自分の体に被さっていた黒い外套に気付き慌てて尋ねるニカをちらりと見て、また本に視線を戻すレゼ。

視線が絡んだその一瞬、ニカの青い目はレゼの赤い目と、夕日に照らされる黒い髪を写した。


「綺麗…」


ふっと漏らした声に、びくっと反応し驚くようにニカを見たレゼ。

その反応を見たニカは自分が言葉を発してしまったことに気付き、慌てて言葉を重ねた。


「レゼの目、ルビーみたいでとっても綺麗。黒い髪も、普段もしっとりとしていて綺麗だけど、夕日に照らされたら赤や金にも輝いて、本当に綺麗だわ…」


感嘆の言葉を連ねるニカを、眉間に皺を寄せて見つめるレゼ。
かと思えばブワッと顔を赤く染めた。


「何バカなこと言ってるの」


本を横へ置き、膝にいた子ギツネに顔を埋め、赤く染まったその肌の色を隠す。


「あれ、どうしたの?」

「別になんでもない」


夕日の赤に包まれているせいで、耳まで染まった赤色がニカの目には写らなかったことにレゼは心底安心して、顔の火照りが冷めるまでそのまま子ギツネに顔を埋めていた。