私の初恋は苦しいものだった。

「桐原先生?」

桐原先生は、地元の消防団にも所属していて、昨晩は大きな火事があり、二時間しか寝ていないと言っていた。

私は、彼を起こす気はなかったが、なんとなく彼の名を呼んでいた。

「どうした?ゆさ?」

彼はたまに私のことを名前で呼ぶ。

私がそのたまにをいつも待っていることを彼は知らない。