「あたしは竜二の子だとは思ってない」



俺の目をすぐに逸らして言い放つ紗奈はどこまでも俺を当事者にはしたくないらしい。



「だったらさ、神谷に会う可能性のあるここに来る前にこれは見えないようにしとけよ」



紗奈のカバンのマークに触れる。



「そうだね。ごめん。浅はかだった」



紗奈は丈のことは見ても俺のことは見ようとはしない。



「丈、もういいよ。何言ってもかわんねぇよ」


「なんでだよ。いいのかよこのままで」


「一度も俺のこと見ようとしねぇ時点で結果はわかってんだよ」



ほんと何やってんだろ。
もう結果なんてあの時から分かりきってんだよ。


ほんとバカみたい。

ほんとに…



「本気になってごめんな」



俺は紗奈の頭に手を置いて



「元気な赤ちゃん産めよ」



紗奈の頭を撫でた。


これで紗奈に触れるのは最後かもしれないな。



「りゅ…「あー!いたいた!神谷!」」



クラスの女が俺を呼ぶ。



「じゃあな」



俺は紗奈に手を振って、その女に向かって歩く。