木の実は面接を終え、スーツケースを置いている駅まで向かった。

こんな私があのセレブな花屋さん“モナンジュ”に採用された。
可愛らしい制服を着た女性が二人と、オーナーと奥様の夫婦の四人で切り盛りしているお店だが、その内の一人の女性店員が近々結婚する事になり、明日にも実家へ帰るところだった。
穏やかで優しそうなオーナーは、私の実家が花屋だという事を知ると、すぐに採用と言ってくれた。
私は、今、家を探している最中という事を伝え、ここしばらくはホテル住まいだという事も正直に話した。
ホテル住まいは嘘になるかもしれないけれど、でも、さすがに、あのお上品なお店でネットカフェ住まいとは言えなかった。

明日から、10時から夜の7時までで休憩が60分、時給は1550円、資格も何もない木の実にとっては最高にいい条件だ。
木の実はすぐにスマホで一か月のお給料を計算した。

とにかく、大急ぎで家を探さなきゃ…
場合によっては、前借りとかしたいけどそんなお店じゃないよね…

木の実はため息をつきながら、スマホで一番格安のネットカフェを探し、“モナンジュ”から一駅の場所に中々いいカフェを見つけた。

よし、ここしばらくが正念場だけど、木の実、負けるな、頑張ろう。

基本、超楽観的な木の実は、怖がりで臆病な事は忘れ、その格安ネットカフェに向かった。