「澤さん、今日は、いつもより人が多いんですね…」


いつもの日曜日より明らかに人が多い。
そして、皆、気持ち程度にお洒落な気がする。


「そうかしら? ニ、三人多いだけよ」


そう話す澤さんも何だかいつもより化粧が濃い気がするし、エプロンも普通よりレースのヒラヒラが多い気がする。
ジャスティンは、ルーフバルコニーに繋がっている澤さん宅の広いリビングダイニングが気に入っていた。
人数が少々増えたところで手狭になることはない。


「じゃ、皆さん、始めましょうか~~?
今日は、ジャスティン先生が、デザートのティラミスを教えて下さるそうで~す」


澤さんがそう言うと、一斉に澤さんの仲間達がジャスティンの近くに群がってくる。
皆さんの事は大好きだけれど、未だにこの光景に慣れない俺がいる。
すると、ちょっと遅れて木の実が入って来た。
木の実が来ると、また一斉に、皆、木の実に群がった。


「ジャスティン先生、今日は私にも教えて下さいね」


木の実はジャスティンを茶化したようにそう言うと、丁寧にお辞儀をした。
その二人の姿を、澤さん達は、キャーキャー言いながら喜んで見ている。


「じゃ、始めますか。
今日は、メチャクチャ簡単なティラミスを作ってみたいと思います」


あらかじめ、材料は澤さんの方で準備している。
生徒達は見よう見まねで、ジャスティンの作り方を習得する。
でも、今日は、小さなガラスのコップに盛り付けるティラミスだ。
インスタントコーヒーとカステラで作るので、はっきり言って30分もあれば終わってしまうだろう。