まぁ、今は慣れちゃってるから、弟の悪性格なんて当たり前だと思ってる私も私だけど。


「遅刻するから、もう行くねっ!」


私は靴を履き変えて学校まで全力疾走した。





「キーンコーンカーンコーン・・・」


学校中に1限目のチャイムが鳴り響いた。



ギリギリ間に合った・・・



「美沙ぁ、遅刻ギリギリってどうしたのぉ?」




私の親友、未海が私に近づいて聞いてきた。




「寝坊したの。あと弟とちょっと口喧嘩かなぁ」


「零くんと?またぁ?」


「だって零が私の分のホットケーキ、ないって言うんだもん」


「本当、美沙はホットケーキ好きだよね」


「ハチミツが好きっていう方が正しいけどね」


そんな話をしながら私はある男の人を見ていた。

その人は、窓の外を見て何か考えてるような表情を浮かべていた。


その横顔を見るのが私の幸せだった。



私、佐藤美沙はクラスメートの、片桐瑛斗くんのことが好き。


でも話したことは一回しかなくて。



一回話しただけで恋に落ちるなんて恋というものは私は分からなかった。


恋に落ちたという自覚を持ったときは、


「本当に恋なのかな?」とか、「これが初恋なんだぁ」とか。




恋についていろんなこと思ったっけ。





きっと、瑛斗くんは私のこと覚えてないかもだけど、私は瑛斗くんと話した会話の内容、昨日のことみたいに覚えている。