カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。



「これって夏みかん?」



 わかってもらえなくて悲しくなってきたから、ちょっと別方向から攻めてみる。



「種類まで知っていて嬉しいです」

「……もったいない」



 その言葉に塩谷くんはぽかんとした顔をした。



「せっかくのいい果物なのに、付け合わせと同じように出したらもったいない」

「で、でも……」

「夏みかんは酸味が特徴。メロンやさくらんぼと合わせたら、酸っぱく感じすぎて食べられない。ジャムにしてパンケーキやブレッド類にトッピングするか、単品で出す方がいいわ」



 さすがに困った様子。
 確かに彼は料理人ではなくてフロア担当。


 どうにも出来ないかもしれないけれど、素敵なお店なんだから成長していって欲しいなという勝手なアドバイス。