カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。



「お待たせしました」



 しばらくして塩谷くんが両手に皿を載せてやってきた。長い指がうまく皿を回し、わたしの前に置く。



「ありがとう」



 どことなく塩谷くんの表情が引き攣っていた気がする。
 スイーツを注文する客がそんなに珍しい? まあ確かに珍しいかもね。この店にとっては。


 テーブルに並べられたフルーツは、やはり少し寂しい感じがする。
 さくらんぼ、みかん、メロンの盛り合わせ。色合いは可愛らしいけれど、これってもしかして……。


 わたしは仕事に戻ろうとする塩谷くんの腕を捕まえる。



「塩谷くん」

「はい。何でしょう」

「これってドリンクとか料理の付け合わせ的に使ってるものじゃ……」

「よく、わかりましたね。その通りです」



 何、その笑顔は。
 付け合わせに使ってるものをデザートにしちゃ駄目だって。ちょっと悲しくなるじゃない。