カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。



 迷った挙句、

「全部ちょうだい」

 言ってしまった。



「へ?」

「全部!」

「マジですか!!」



 塩谷くんは素で驚いてしまい、客前での言葉づかいを一瞬忘れてしまったようだ。
 口を押さえ、頭を下げてカウンターの向こうに消えていった。


 恥ずかしい? いや、わたしは恥ずかしさなんてどうでもよかった。スイーツが食べたい!


 あれだけ美味しいランチを提供出来るカフェなんだから、スイーツだってすごいに決まってる。


 出来ればパンケーキとかパフェとか、和風だとあんみつとかあったら嬉しかったな。


 贅沢は言えないけど。何かスイーツを前面に出せない事情があるのかな。
 ちょっと気になるけど、たまたま見つけて入ったカフェだし、また来るとは限らないし、さすがに聞いてはいけない気がする。