カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。



「お待たせいたしました!」



 声がして、わたしは慌ててメニューを戻す。
 さっきと同じ店員さんが、慣れた手つきでテーブルに料理を並べていく。



「本日のランチメニューです。メインのナポリタンにサラダ、スープ。珈琲は食後にお持ちします!」



 メニューを全て元気に説明してくれた。


 なかなかのボリュームだけど、お腹がすいているわたしにとって問題ない。



「ありがとう」

「それから、これ」



 彼はテーブルにもう一つお皿を置いた。



「え? 何ですか?」

「ブールっていうパンです。サービスなんで、ゆっくり食べてください」

「いいんですか?」

「初めてカフェを利用されるお客様に、サービスしているんです。どうぞ」



 お礼を言うと彼はにっこり笑ってカウンターの方に行ってしまった。


 さて。せっかく見つけたカフェ。そしてランチ。
 嫌なことを忘れて、味わってみよう。