カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。



 ***


 ゆっくりと湯船に浸かり、バスルームを出るといい香りが鼻をくすぐる。肉の焼ける匂い……!!


 一瞬にして夕飯モードになるわたしってすごい。お腹が鳴るし、疲れを取るのは風呂ではなく食事の方ね。



「麗ちゃん。ちょうど出来た」



 夏彦さんがテーブルに皿を置きながら、笑いかけてきた。
 あ。あんなふうに笑えるんだ。いつもそうだったらいいのにな。って、そうじゃない。



「あ、あの。部屋まで借りて、食事まで……本当に悪いですよ」

「一人で食事は寂しいから、一緒に食べて欲しい」



 本当に寂しそうな顔をするから、それ以上のことを言えなくなってしまった。



「手伝います」



 夏彦さんを手伝い、テーブルに皿を運び、お茶を注いで、お茶碗にご飯をよそう。


 そして気づいた。



「何でわたしの食器が揃ってるんですか!?」

「それは――」

「妹さん?」

「いや、買った」