カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


「大丈夫。みんな五十代だと……」

「そこまでは思ってません! すごく落ち着いてるから、多分……あの、大人の魅力あって素敵、で……」



 わたし、何を言ってるんだろう。
 慌てて上手く言おうと言葉を選んでいたら、満足そうに夏彦さんはキッチンへ行ってしまった。


 よくわからないけど、喜んでくれたのかな?


 とにかく湯につかろう。疲れているから、いちいち驚くんだ。
 今日あった嫌なことも全部忘れて……って言ってもお風呂入ると思い出すんだよね。


 どうしよう、アパート。
 いやいや、明日がある。大丈夫! 高瀬麗は元気に頑張れる!!


 そう思い込みながらバスルームに向かう。
 買ってきたシャンプーを持ってそこに行くと、ピンク色のタオルが用意されていた。



「夏彦さん……ここまで用意してくれるなんて」



 優しいというか、気が利きすぎているというか、無口な部分からは見えない性格。


 たくさんの夏彦さんを知っていく。
 こういうのも悪くないな。