彼を…荻原 舜 ( おぎわら しゅん )を私が最後に見たのは、雲一つない晴れた寒い日だった




そんな天気には似合わないほど目を腫らした彼は


「俺、海の向こうで幸せになってくる!」


そう高らかに宣言した。



'' 海の向こうで幸せになってくる ''


その裏にどれだけの涙があったのだろう。


どれだけの苦しさがあったのだろう。



そんなことも知らずに私は。



「海の向こうかぁ、私も行ってみたいなぁ」



なんて。


能天気すぎる回答をして、傷つけて。





最低だ。



「そのうち来いよ、」


「うん、遊びに行くね!」



遊びに来い


なんて、一言も言わなかったのに。





これはあとから知ったことだけど、


舜は、心臓に欠陥があったらしい。




そんなことも言わずに幸せになるなんて言って。