「琴梨ー、朝よー」


…お母さんの声が聞こえる。


だけど、昨日も夜更かしした私はまだ眠くて。



「んー、まだ…もうちょっと」


ふわふわと半ば夢心地のまま、抱き枕の“ウサ公”を掴む腕にぎゅっと力を入れ直す。


相変わらずウサ公はふにふにして抱き心地が良いなぁ、なんて腕から溢れそうな程の弾力性を確かめていると。


「ちょっと、琴梨!
毎朝 毎朝 いい加減にして頂戴!」


バンッと部屋のドアを開ける大きな音がして、ツカツカとフローリングの床を歩くスリッパの音が聞こえたかと思うと続けざまにバサッと布団が剥ぎ取られてしまった。


「お母さん酷い...」


寝惚け眼のまま、ベッドからゆっくりと上半身を起こすと


「ひっ」


そこにはフライ返しを持ったままのお母さんが仁王立ちで私を見下ろしていた。


「朝だって言ってんでしょーが。
学校遅刻するわよ」


時計に目をやると、

げっ、結構ギリギリな時間。



「今すぐ起きます!」


半ば跳ね起きる様にしてベッドから立ち上がった私を見て、


「よろしい」


お母さんは満足気に頷いて部屋を出て行ったのだった。