玄関の扉に鍵を差し込む。

上の鍵穴と下の鍵穴。


カチャリと音がして鍵が開いたのを確認すると私はそろりとノブを掴み手を回した。


何で自分の家に帰って来ただけなのに、こんなに緊張しているんだろうか。


阿保かな私。


心の中で一人、自分に突っ込む。



「ただいまー」


一人なんだと分かっていてもつい言ってしまう。


返事は勿論返ってはこなくて。


しんと静まり返った玄関に私の声が響いた。




今日から三カ月、毎日か。


お父さんが殆ど居なかったからお母さんが今までずっと一緒に居てくれた。


私に寂しい思いをさせない様にしてくれてたんだなってよく分かる。


だけど、もう高二だし。

少しは大人にならなくちゃ。


でも、



...寂しいな。



後ろでばたんと扉の閉まる音がして、私は内側から鍵を掛けると
靴を脱ぎリビングへと足を運んだのだった。