「はぁーっ...間に合ったぁ」


予鈴を知らせるチャイムの鐘が鳴るとほぼ同時に教室に滑り込んだ私は、半ばふらふらになりながら席に座り込む。



「おはよ、今日もギリギリだったね」



前の席に座る友達の任谷いちる(とうや いちる)が困った様な笑顔を私に向ける。



「おはよー、いちる。
今日も朝大変だったんだよー」


走り疲れて、息も絶え絶えにそう零すと



「もう、琴梨は毎日そればっか」


いちるは肩を竦めてお手上げと言わんばかりに両手を上げた。


本当なのになぁ、特に今朝は。



いちるは二年生になってからクラスが同じになって初めて知り合ったけど
席も近いし、話も割と合うからすぐ仲良くなった。


サバサバした性格で、くりっとした丸い目が可愛い女の子だ。


そのくりっとした可愛い目が今は私を訝しげな視線で見つめている。



「体育前に汗掻いてどうすんの。
次から家を5分、いや10分は早く出た方が良いかもね」



「...頑張る」


お母さんにはぶつぶつ言っちゃうけど、いちるには諭されても文句が出てこないから不思議だ。



多分、友達だからなんだろうけど。