王と王妃の元に生まれてきたことに悔いはない。
こんなにもたくさんの愛情を注いでくれる2人の元で生を受けたことは、神さまに感謝しなければならいと思うほどである。
だから、このたくさんの愛情を私はどうやって返していけばよいのであろうか。
王や王妃には言えないことがあった。
それは、私が“姫”という役職をどう果たしていけばよいのか、悩んでいることだ。
私は一度乳母に尋ねたことがあった。
「姫とはどういった役職なんだろうか。」
乳母は私の問いに答えてくれた。
「姫とは、笑っていればいいのです。国民や家族を愛し、ただ生きていけばよいのです。何も着飾ることはないのですよ。」
乳母はいろいろなことを教えてくれた。
城下ではやっている話や遊び、知らない言葉の意味や、この国の情勢
そして、
愛とは何か、恋とは何かを。

