「フローラ、フローラ姫!」
「そんなに何度も呼ばれなくとも聞こえていますよ。王様。」
ここはみどり豊かな王国“ランドール王国”。
フローラと呼ばれる姫は、金色の髪をなびかせ、全てを見透かされてしまいそうな空色の瞳をしていた。
「おう、フローラよ。そなたは王妃に似てとても美しい。」
白髪で白髭の大男は、大国“ランドール国”の王。
王の1人娘であるフローラを心から愛していた。
愛ゆえに、いつも自分の傍から離すことはないほどである。
「王さま、もうフローラも18歳。そろそろ嫁いでもよい年ごろなのに、王がそのようではいつまでたっても嫁に出せませんよ。」
「王妃!!」
フローラは王の後ろにいる王妃の姿を見つけると、ドレスの裾を両手で持ち、王妃の元へと駆けた。
「フローラ。走らなくとも、逃げはしませんよ。」
駆け寄るフローラを王妃が優しく包む。
王は目を細め、王妃の肩に自身の手を置いた。
「フローラ。3人でいるときは王や王妃ではなく、ただの家族でいいのですよ。」
「はい。お父さま、お母さま。」
家族水入らずで過ごせる時間は長くはない。
王は家族以外にも国民を助けなくてはならない。
そのためには、寝る間を惜しんでも王として責務を果たさなくてはいけない。
「あぁ、愛するフローラよ。そろそろ時間だ。行かなくては。」
「分かっていますよ、お父さま。気を付けていってらっしゃい。」

