王妃が亡くなってから2月も経たないうちに、王からある女性を紹介された。


「フローラよ。こちら、ローズさん。お前の新たな母になる方だよ。」


そういった王の顔はいつになく穏やかであった。
王妃が亡くなってから、こんな穏やかな顔を見たことがなかったくらい。


私では王の支えにはなれないのだと、実感した。


ローズと呼ばれる女性は、容姿はとても綺麗であり、母の穏やかな雰囲気とは違い、どこか緊張感を覚えさせられるような感じであった。


「姫様のお母さまの代わりになればいいと思っていますが、こんな私に務まるのか…。」


ローズは私の髪に触れようと手を伸ばすが、触れる一歩手前で引っ込めてしまった。
私はその人の伸ばされた手を握った。
その人の体温は温かかった。


「王が選んだ人なら、私は賛成ですよ。ローズさん、いえ、お母さまとお呼びした方がいいのでしょうね。」


「フローラ…、ありがとう。」
「姫様、どうかわたしを母だと思いなさって、なんでも言って頂戴ね。」


2人に抱きしめられる。
私も無意識のうちに抱きしめ返していた。
私も欲しかったのだろうか、もう一度家族の温かい“愛”を。