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潮風が香る港町‐ランドール‐。
この町には、いつも明るい声で賑わっている。
私はその町の花屋に住み込みで働いている。
「フローラ、おかえり!さぁ、夕飯にしようかね。」
「ただいま、バルーナおばさん。」
この人はこの花屋を1人で営むバルーナおばさん。
バルーナおばさんの旦那さんは漁師で、3年前漁に出てから戻らなくなったと言っていた。
花屋の名前“ティアモ”。
どこかの国の言葉で、“愛する人”という意味だそうだ。
3年前、私がこの町に来た時、潮風とともにいい匂いのする花の香りに導かれ、バルーナおばさんと出逢った。
見ず知らずの私を快く受け入れてくれた人であった。
旦那さんが行方知れずになって3日後だった。
バルーナおばさんは、心行くままここにいていいと言ってくれた。
私がこの人に惹かれたのは、昔私の傍にいて大事なことを教えてくれた乳母と同じ名前だったこと。
そして、花屋が“ティアモ”愛する人だということ。
バルーナおばさんと同じで、私も愛する人の帰りを待っているということ。
キッチンでいいにおいのするスープを器によそう、バルーナおばさんの背にあの日の乳母が重なる。
ほんと、瓜二つだよ。
人は死後、生まれ変わりとして新たな人生を歩むという。
そしかして、バルーナの生まれ変わりだろうか。
あれから何年も孤独を生きてきた私にとって、今が一番心温かい時間だった。

