私の傍には私を心から思ってくれるバルーナがいたから、王妃の死から立ち直ることができた。


しかし、私と同じように王妃を失った悲しみ・苦しみを抱えている人がいることに、気づくのが遅かった。


私は自分のことで精一杯であったため、気を配ることができなかった。


その人は、徐々に壊れていった。


執務はいつも通りにこなしているが、
夜は眠れず、薬便りであること。
そして、何も考えたくないと言って酒を大量に摂取するようになったこと。


王のことをバルーナから聞かされた。


「そ、そんな…。」


私は王の元へと走る。


「なんだ、フローラではないか。私の愛しいフローラよ。少しやせたか?」


私は王の姿を見るなり、声が出ないほど驚いた。
王妃のお葬式を終えてから、王と正面を向き合って顔を合わせるのが初めてであった。


王は白髪・白鬚なことには変わりないが、目を疑うほど瘦せていた…。


「そ、それはご自身に言う言葉なのではないですか、王。」


王はそうか、と一言話すと、乾いた笑い声を発した。


王に使える従者も今の王の姿が痛々しいのか、目を逸らしていた。


あぁ、私は姫として失格なのかもしれない。
いや、家族として失格なのかもしれない。


私は勢いよく王に飛びついた。
王は私の体を支えられず、後ろへ倒れこむ。


「どうしたんだい、フローラ。」
王は私の頭に手を置いた。


私はごめんなさい、と呟き、王の首に回す手を強めた。