バルーナは王妃が亡くなってから、フローラの様子がおかしいことに気付いていた。
「姫様、無理に笑わなくともよいのですよ。」
いつの間にか口にしていた言葉。
我に返って、焦る。
どうにかごまかそうとして、紅茶の話をするも、どうも会話が弾まない。
いつもは、楽しそうにわたしの話を聞く、姫の姿はなかった。
「無理なんかしていないわ。姫とはいつも笑っているものだと、教えてくれたのはバルーナ、あなたよ。」
ティーカップに注がれた紅茶の香りを嗅ぎながらフローラは口にした。
紅茶を一口口に流すと、レモンの香りが口腔に広がった。
「確かにそのようなことを申し上げましたが、意味が「わたしは、」
カチャンと音を立て、ティーカップを元のテーブルに戻した。
「私はその言葉で救われたよ。王妃が亡くなってどうふるまえばよいかを教えてくれたのだから。わたしは笑っているよ。ずっとそして、これからも。」
私は作り笑いを振舞えばよいとは言ってはいないのだが…。
バルーナは姫の笑いが心からのものではなく、作っているものであることに気付いていた。
だから苦しかった。
自分のおかげで王妃が亡くなってからの姫自身の在り方を知りえたと言って、作り笑いを浮かべている姿が、痛いほど悲しかった。
「姫様、失礼します。」
「!!!!」

