はぁ、はぁ、



灯火を頼りに王妃の寝室へと走る。


寝巻の裾が足の回転の邪魔をしている。


はぁ、はぁ


おかあさま、おかあさま!!!


涙が次々目から零れる。
涙で視界がぼやける。


王妃の寝室の扉を勢いよく開けると、ギィィィッと音がした。


寝室には王と家臣数名、乳母のバルーナが囲むそこには、ベッドに横たわる王妃がいた。


王妃は眠っているようにしか見えなかった。


「あれ、王妃寝ているだけなのでない?みなで私に嘘をついて…ははは…。」


しかし、王妃を囲む人々は泣いたり、眉を寄せ必死に声を漏らさないと我慢していた。


王は王妃の頬にそっと手を伸ばし、顔の輪郭をなぞる。


「王妃、そなたは最後まで美しく、そして、懸命に生きたよ。」


その言葉で、私も王妃が、母が亡くなったことを実感した。


嘘であってほしい。


ゆっくりと足を王妃が眠るベッドへと進め、王の隣に立つ。


「王妃は最後までお前を案じていたよ。あの子は優しい、いつか自分を犠牲に何かを得るようなことがあるのではないかと。」



フローラはゆっくりと王妃の手に自分の手を伸ばす。
自分でも気づかなかったが、その手は震えていた。