よく状況がつかめないまま、裕と別れてアパートに帰った。

 土曜。
 勝手に決められてしまった。

 困るはずなのに、ちょっと嬉しくてどう反応していいのか…。

 彼氏との約束を心配してくれたけど、そんな心配はいらない。
 だっていつも私から聞かなきゃ会えないし、約束を取り付けたって今日みたいに来ない時だってある。

 いつもなら今日もずーんと沈んでアパートに帰るところなのに、それほど落ち込んでいない。

 落ち込んでいないどころか…。

 千紗はベッドに仰向けになって、右手を掲げて眺める。

「手…大きかったなぁ。」

 スラッとして綺麗な指。
 あの綺麗な手に握られたんだ…。

 思い出すと顔が急に熱くなって、恥ずかしくなる。

 これは浮気じゃない。甘え講習です。

 そう何度か心の中で繰り返した。