よく分からない押しの強さで、ぶるんぶるん振り回されてる気がする。
 さっきは急に抱きしめられて、今は何故か裕のポケットの中に手を入れられている。

 お邪魔しまーすしていいよって…なんか可愛い。

 場違いな感想に自分自身が笑えてしまう。

「ねぇ。俺っていつまでキミって呼べばいいの?」

 裕の質問に驚いてしまう。

 あぁ。そっか。私は名乗ってなかったや。

 初対面のはずなのに、そう感じさせない裕は不思議な人だ。
 特に私なんて人見知りなのに。

「私は千紗って言います。」

「なんで敬語?」

 ククッって笑う裕はキラキラしていて、ちょっと私には眩し過ぎる。

「だって年上。」

「そんなの関係ないよ。敬語、禁止!」

「な…。」

 強引だし、理不尽だ!って思うことばっかり言うのに、なぜだか心地いい。
 別にオレオレな人、好きじゃないんだけどなぁ。

 …って!別にこれ浮気じゃないから!!

「千紗って百面相みたいだな。」

 ククッって笑う裕。
 裕の方が表情豊かでうらやましい。

 この人、なんで私に構ってくるんだろう。

「とりあえず連絡先交換しよ。」

 反対側のポケットから携帯を取り出した裕は当たり前にポケットの手はそのまま。

 あの…私の右手、そっちなんです。
 こんなことも口に出して言えない自分に正直がっかりする。

「あぁ。ごめん。
 このくらい言えばいいのに。」

 そう言って手を離してくれた裕がちょっと意地悪な顔をした。

「それとも俺と手、離したくなかった?」

 な…。

「そ、そんなわけないよ!」

「ハハッ冗談だって。」

 ……はぁ。やっぱり私、可愛くない。