「ほら。手、お邪魔しまーすするだろ?」

 あれから何ヵ月か経った今も俺の隣には千紗がいる。

「ねぇ。ドキドキしてないの?」

 俺より緊張した顔をしている千紗が俺のポケットに小さな手を滑り込ませた。
 俺はそれをギュッとつかまえる。

「大丈夫。
 絶対に受かってる自信あるから。」

 季節外れの雪が降った今日は朝から寒くて、おかげで恒例になっていたポケットへのお邪魔しまーすができて俺はちょっと嬉しい。

 今日は大学の合格発表の日。
 そして……受かればもっと大切な日になる。

「ねぇ?本当にいいの?」

「何が?」

「その……あの…。
 裕はまだまだ将来性が限りなくあって、可能性も無限大だよ?」

「何?何?
 俺にはもっといい女がいるんじゃないかって言いたいわけ?」

「う………。
 端的に言えばそういうことです。」

 遠慮がちで控えめで、どちらかと言えば自分のことよりも人のこと。
 そんな千紗だから…………。

「俺、千紗から離れる気ないけど?」

「………私もです。」

「ならいいんじゃない?」

「………はい。」