不意にふわっと腕を回されて控えめに力なく抱きしめられた。

「俺、千紗のこと好き。
 たぶんハンカチ渡してもらった時から。」

 やっと言ってくれた言葉に涙がこぼれた。
 私だって。私だって。
 口に出そうとする言葉は声にならなくて涙が後から後からこぼれて邪魔をする。

「高校生だって隠してたし……浩大との関係とか、俺だって彼女いたわけだし、そういうこと全部隠して千紗に近づいて、手を出してからしか真相を明かせなかった。
 卑怯だって言われたって仕方ない。」

 気づけば裕の手は震えていた。
 回されている腕を外して、その震える手を頬に当てた。

「卑怯だなんて思ってない。
 それに………裕が来てくれなかったら、会えなかった。
 私は裕のこと………。」

 思い詰めたような顔をする裕が私を制止した。

「待って。
 俺、25歳じゃない、ただの……ガキだよ。
 それでもいいの?」

 笑えてしまってクスクス笑う私を不安そうに見る裕に余計に笑えてしまう。

「だって、それ変更可能なんでしょ?」

「変更可能って………。」

「等身大の裕に会ってみたいです。」

「え…………。」