浩大と玖美の関係、気づかれてないつもりだったのかよ。

 言い訳を口にする玖美を冷ややかな目で見る。

「あれから……仁木くんが「他の男と会ってるのかよ」って言われた後からは会ってないわよ!」

 そんな嘘、よく平気で言えるよな。

「えー。玖美ちゃん。
 昨日もいいことしたでしょ?」

 浩大に指摘され、カッと赤くなった顔のまま玖美は浩大をにらみつけた。

「おぉ。こわっ。」

 なんて浩大はふざけている。
 ほんと食えない奴。

 こいつに……浩大に真っ向勝負をしたってどうにもならないのに、ずいぶん振り回された。

 でも今日でおしまいだ。

「だから前にも言ったけど、俺はもう玖美と付き合ってるつもりはない。
 ……もう一回言う。
 別れてくれ。連絡先も消してくれ。」

 ショックを受けた顔をする玖美。
 自分の行いのせいなのに、よくそんな態度を取れるよな……と嫌悪感しか感じない。

「浩大のせいよ!
 何よ。あんたみたいなのより、仁木くんの方がかっこいいし、将来有望なのに!」

 知るかそんなの!と言いたいような捨てゼリフを残して階段をドタドタと下りて行った。
 乱暴にバタン!としまった玄関のドアが帰っていったサインのようだ。

「で?俺にも千紗に謝れって?」

 飄々とした浩大が憎たらしくて殴ってやりたくなる。
 でも…………。

 パチンッ。

 え……。