「………私、部屋にあげたの裕が初めてだよ?」

「は?」

 何を言って………。
 真意を確かめようと目を見ると、いつもの純粋そうな瞳と目があった。

「だって、今日浩大と会うって。」

「うん。会ったは会ったんだけど、裕が好きだから帰って来ちゃった。」

 だって浩大が………。
 あぁ……千紗だとは言ってなかった。
 他の女とだったかもしれない。

「………ごめん。
 謝っても許されないことした。ごめん。」

 急激な後悔が押し寄せる。
 早とちりだった上にひどいことを……。
 何やってんだ。俺は。

「いいよ……とは言えないけど…。」

 そう言った千紗は凛としていて、とても人に甘えられずに悩んでる奴になんて見えなかった。
 俺より、ずっと大人だ……………。

 そして続きを口にした。

「どうして、あぁいうことしたのか教えて?」

 あぁ……。
 こんな形で言うなんて……。
 ただのこんなの言い訳みたいだ。

「俺は…………千紗が好きだ。
 だから他の奴と……そういうことした後に俺に会いたいなんていう千紗のことがショックで………。」

 いや。違うだろ。
 本当の理由は…………。

「裕………わた……裕?」

 千紗を抱きしめると戸惑った声が聞こえる。
 愛おしい千紗を確認するようにもう一度抱きしめると手を離した。

「千紗が好きで他の奴に取られたのが気に食わなくて、力づくで手に入れようとしたんだ。
 独りよがりで最低な理由だ。
 …………もう千紗の前には姿見せないから安心しろよ。」

 くしゃくしゃと髪を触ってから名残惜しい思いを断ち切るように手を離す。

 もう、俺は……千紗に合わす顔がない。

 離した手の下から千紗のふくれっ面が見えて、今度はこちらが戸惑う番だった。

「もう!
 勝手に1人で話を終わらせないで!」

 手を広げた千紗が飛びついてきて、軽い衝撃と思わぬ行動によろめきそうになる。

「私……あの、嫌じゃなかったよ?
 ビックリしたけど。」

 な…………………。