からかわれてるのが分かるんだけど、こっちは手も足も出ない。
 でももう帰らなきゃいけない時間なんだろうな。

 もちろん帰らないでなんて言えないし!

 クククッと笑っていた裕は腕を緩めて、抱きしめていた手を外した。

「ほら。これなら言える?」

 解放された体は裕のぬくもりを失って急に寂しく感じてしまう。
 それでも……言えるわけない。

「ま、これも練習だな。」

 頭を優しく撫でられて裕が立ち上がる。
 私も立ち上がって玄関まで流れで見送ることになった。

「じゃ今度こそ土曜な。」

「……うん。
 あの、ご飯。
 ありがと。おいしかった…デス。」

 顔は見て言えなかったけど裕が頭をグリグリしてくれた。

「千紗にしては上出来だな。」

 急に引き寄せられて、頭にチュッって音がした。

「じゃーな。」

 パタン。

 静かに閉まったドア。
 赤くなりっぱなしの顔は今さらこれでもかってくらいに赤くなる。

 裕は外国育ちが長いんだ。きっと。
 じゃなきゃこんなにスキンシップ激しい人、私、知らない!