彼氏がいくつかなんて知ってんだけどさ。
 っていうか千紗は俺のこと信用し過ぎなんだよね。

「ねぇ。年上のお姉さまなんでしょ?
 ナデナデしてよー。」

「う…あの……無理です。」

「ハハッ。年下設定でも敬語じゃん。」

「う…。」

 年齢っていうより、いっぱいいっぱいになると敬語になるみたいだけどな。
 でも、それに自分で気づいてないのか。

 んっとにおもしろい奴。

 膝の上から見上げた千紗は固まったまま。

 ちょっと可哀想だったかな。
 まだ受け身じゃないと千紗は無理だもんね。
 受け身ならなんでもいいってのも、どうなの?とは思うけど。

 裕一は起き上がると、腕の中に千紗を収めた。

「固まってる。千紗、可愛い。」

 こっちがナデナデしてやって、またからかいの言葉をかけてみる。

「帰らないで…。って言ってみる?」

「…………。」

 あぁ。そうだった。
 スキンシップしたままじゃ話せなくなる機能だった。

 ククッと苦笑してから解放してやった。