裕といるとよく分からない状況にすぐになっちゃって、急に裕が家に来ることになった。

 当たり前に『千紗』って呼び捨てにされて、色々にドギマギして、今もこうして隣同士に並んで歩くことにドキドキしてしまう。

「ほら。今日はお邪魔しまーすしなくていいの?」

 クスクス笑う裕がコートのポケットを開けている。

「それとも抱きしめた方が良かった?
 そっちの方が暖かいしね。」

 なんて言う裕に慌てて「お邪魔します!」ってポケットに手を入れる。
 クスクス笑いながら裕もポケットに手を入れて握られた。

 大きな手につかまえられて、ドキンと心臓が飛び跳ねる。

 けど、こういうのが甘やかされてるっていうことなのかなぁ。
 こういうのに慣れれば自分からも甘えたりできるのかなぁって裕の言葉を鵜呑みにすればそういうことになるんだけど…。

 2人でスーパーに寄って、その間もずっとポケットに手を入れたまま。
 勘違いしてるカップルみたいで恥ずかしい。

 それなのに自分から、もう手を離したいです。
 なんて言えないし、言えばまたからかわれそうで…。

 それに…握ってくれている手が、実はちょっと嬉しい。
 …これって浮気になっちゃうのかな。

「何か嫌いな食べ物ある?」

「うーん。そんなに無いけど…レバー?」

「はい。レバニラ決定!」

「えぇ!苦手って言ったのに!」

「女の子なんだから鉄分は大切だよ。」

「フフッ。なんだかお母さんみたい。」

「おいおい。お父さんじゃなくて性別の垣根越えちゃうわけ?」

 こんなじゃれあい今まで男の人としたことなんてない。
 ううん。女友達ともしないかも。

 なんていうか…やっぱり裕って不思議な人。