やっぱり千紗はおもしろい。
 なんていうか、からかいたくなる。

 手を握れば振り払えばいいのに、真っ赤な顔して固まっている。

 そうそう。
 そもそも初日から嫌なら頬をひっぱたくくらいしてもいいくらいだ。

「千紗って可愛い。」

「な…。」

 ますます真っ赤になる千紗が本当おもしろい。

「ねぇ?カフェじゃ軽いご飯しかないけど…。
 どうする?店、変える?」

 黙ったままの千紗に、あぁ。と、気づいて手を離すと、やっと話せるようになるみたいだ。
 どういう機能なんだろう。本当おもしろい。

「私はどこでもいいんですけど…。
 まだ1年目で一人暮らしだし、そんなに高いところは…。」

 本当に律儀な奴。

「ご馳走してくださいね。って可愛く言えばいいのに。
 って千紗にはハードル高いんだろうけどさ。」

 だいたい男に一人暮らしで、とか言っちゃダメなのに分かってないよな。
 だから変な男に引っかかるんだよ…。

「ねぇ。じゃ千紗ん家でもいいの?」

「え!?
 いやいやいや。それはちょっと…。」

 さすがにそれはまずいって分かるんだ。
 でもきっとこの子ってさ。

「じゃ俺ん家にする?
 ご飯くらい作ってやるけど。」

「………。」

 考えてる。考えてる。

「じゃ、私の家で大丈夫です。」

 ほらやっぱり。
 男の家は危ない。なら自分の家で。
 って…。本当に大丈夫か心配になるわ。

 思わずため息が出ると純粋そうな千紗の瞳と目が合った。