カフェに行くと昨日とは違ってスーツ姿の裕がいた。
 昨日の私服も似合っていたけど、スーツは余計にスマートに見える。

 仕事も…できる人なんだろうなぁ。
 そんなことを思わせる風貌だった。

 些か緊張して声をかける。

「ごめんね。待ったかな?」

 フッと笑った裕が意地悪なことを口にする。

「ダメだろ。呼ばれてすぐ来る女は都合がいい女って前に言ったのに。」

 な…。

「だって…電話切られちゃって…どうしていいか…。」

 プッ。ハハハハハッ。

 急に笑われて面食らう。
 凛々しかった顔が少年みたいに崩れた。
 やっぱりこの顔は可愛い。

「ごめん。ごめん。来てくれて嬉しいよ。
 来てくれるか心配してた。」

 嘘ばっかり。
 余裕な態度がそんなの微塵も感じさせない。

「それに。慣れない俺に口ごたえするなんて成長したんじゃない?」

「あ…。」

 そういえば、口ごたえって言えるほどのものじゃないけど、でも私にしては珍しいかも。

「ね。」ってウインクする裕がちょっと憎たらしいけど…昨日から合わせても数十分くらいしか会っていない人なのに、裕の前では自然体でいられるのかもしれない。

 きっと裕が自然体だからだ。

 裕の前に腰掛けると、手を取られ握られた。

「ねぇ。電話で俺が「会いたい」って言った時、どんな顔してた?」

「な…。」

 やっぱり前言撤回!
 この人の前で、自然体でなんかでいられない!!