次の日、出勤すると同期の亜紀(あき)ちゃんに声をかけられた。

「おはよ。千紗ちゃん。
 なんか今日はご機嫌じゃない?」

「え…そ、そんなことないよ~。」

 亜紀ちゃん鋭い…。

「昨日は彼氏と会えたんだ?」

 にこにこ笑顔を向けてくる亜紀ちゃん。
 でも…。

「ううん。またすっぽかされちゃった。」

 そう答えれば鬼の形相になる。
 亜紀ちゃんってば可愛いのに、こういう時は私より怒ってくれるんだよね。

「何それ!だからそんな男やめなって。
 だってまだ学生なんでしょ?
 社会人の大人な男をつかまえなよー。」

 大人な…。
 つい裕を思い浮かべるけれど、大人な男っていうイメージには当てはまらない。

 どっちかって言えば、たまに見せるくしゃっと崩した笑い顔が可愛いし。
 少年の心を持ったままの男性って感じ?

 思い浮かんだイメージに自分で笑えてしまう。

「ちょっとー!千紗ちゃん!
 何かいいことあったんでしょー!?」

 詰め寄ってくる亜紀ちゃんをかわすのは至難の業。
 でも…なんか心配かけちゃいそうだし。

 説明できないけど…裕は大丈夫って思えちゃったんだよね。
 って、ひどい彼氏につかまってる私が言うのも説得力ないんだけどさ。

 だから…まだ亜紀ちゃんには言えません。