翔と入れ替わりで入ってきた医師。

「こんにちは。君は僕を覚えているかい?」

その言葉に首を振る私。

「そうか…翔君から話は聞いたよ。また忘れてしまったんだってね。」

『また…?』

え…私は前にも記憶を失った事があるの…?

自己嫌悪に苛まれそうになる。

「僕は君の主治医の紗枝月だよ。君は昔、一度記憶を失っている」

そう…だったんだ…

「どうする?親御さんにはこちらから連絡を入れておくかい?」

『いえ…大丈夫です』

親には伝えて欲しくなかった。

親に対する気持ちは何故か覚えている。

「分かった。じゃあ今日はもうゆっくり休みなさい」

そう言って紗枝月先生は出ていった。

私に気を遣ってくれたのかもしれない。