次に私が目を覚ました時、私は記憶を失っていた。

それもいじめられている間の記憶を。

『翔…?どうして私はここにいるの?』

そう聞いた時翔はとても戸惑っていた。

「何も覚えていないのか?」 と。

それから医者が来て親にこう伝えていた。

“精神的ダメージによる記憶喪失でしょう。運が良ければ戻ることもあります”

親は涙を流していた。

でも、自殺した理由がわからない私。

自分自身も戸惑っていた。

それから私は元いた学校に戻らず転校した。

記憶をなくした私にとっては訳が分からず、ただそのままその空気に流されていた。

ただ、1つだけ翔と約束した。

“中学は同じところに通おう” と。

そして6年生は何事もなく終えた。

6年生では親友である希音と出会った。奈那とも。


-否、“だった”の方がいいのだろうか。


でも、その時はまだあまり仲良くはなかった。



卒業後に私は中学受験をした。

そこは親の配慮だったのだろう。


-自殺をしたせいか、私をはれものを扱うように接していたが。


私は無事受かり、翔と同じ学校になった。

それはそれは、本当に嬉しかった。

そして同じクラスになり、希音、奈那とも同じクラスになった。

そこでだんだんと仲良くなったのだ。



中学校に上がってから私はだんだんと“孤独感”を感じるようになった。

そんな時だ。

奈那と仲良くなり始めたのは。

徐々に気を許して言った私。


-奈那の言葉がすべて嘘であったとも知らずに。


私と奈那は“神友”と言い合うようになった。

だが、希音は奈々のことをあまり良く思っていなかった。

奈那には噂があったからだ。

例えば、“口が軽い”とか“裏がある”とか。

それはもう言い出したらキリがないくらい。

それでも私は奈那を信じていた。

それもすぐに消え去ることになったが。

奈那が私の秘密を言いふらしていたのだ。


本当にショックだった。


私は“神友”だと思っていたが、奈那はそうでは無かったからだ。

ここでようやく噂が本当だと気づいた私。

すぐに奈那とは縁を切ろうとした。

だが、奈那は謝ってきた。

勿論、私は許していない。

が、しつこかったというのもあり表面上は許していた。


そこからだ。

他のみんなとも距離を感じるようになったのは。

ただ単に私が人間関係に敏感になっていただけだと思うが。

誰も信用出来なくなった。

でも、希音だけは信用していた。

それでも距離は感じていたが。


“他の人よりは信用していた” 言ってしまえばそうだろう。


だから今、親友だったんだ。

それからみんなとの距離は変わることなく過ぎ、中2になった。



そして6月頃──

突然希音の父親が倒れた。

希音は家族ととても仲がよかった。

だからすごくショックだっただろう。

父親の体調が優れなくなっていくにつれ、希音の元気もなくなっていった。

学校では必死に隠そうとしていたが。

遂に8月、希音の父親は亡くなってしまった。

夏休み中だった為、希音にとっては好都合だったかもしれない。

学校ではそれも隠そうとしていたくらいだから。

それでも、私の前では弱音を吐いたりしていた。

不謹慎だが、少し安心していた。

希音が私を頼ってくれているという事実に。

それからだんだんと希音は調子を取り戻していき、中2の終わり頃には今の元気さを取り戻した。

否、内面では立ち直っていなかっただろうが。