«翔side»

正直、昨日見た美麗の左手首には驚いた。

まさか、アイツも“していた”とは思わなかったから。



昨日の夜、俺はとてつもなく寂しさに襲われた。

その時、帰るときに会った美麗を思い出した。

何故かはわからない。

ただ、無性に会いたくなった。

“男なのに情ねぇ”

そう思ったが、会いたいと1度思った心が踏みとどまる様子はなかった。

気がつけばアイツの家の前にいた。

チャイムを鳴らすがなかなか出てこない。

出かけてたか?

そう思った時


-ガチャ


外を覗き込むようにして美麗が扉を開いた。

と、思えば扉を閉めようとしやがった。

そのまま扉の開け閉めでの戦いが始まったが、

来た理由をしっかりと考えていなかったからちょうどよかった。

まぁ俺の顔を見てわかっちまったみたいだが。


なんだかんだ言ってご飯を食べさせてもらい、皿洗いを引き受けた。

それを手伝いに来たアイツ。

袖をまくった時に見えたリストバンドに目を見張った。

勿論、そのままにして置けるわけでもなく問い詰めようとしたが、寝室に逃げられたため俺は部屋に戻った。


-あのリストバンドにしみていた血の量


どうやったらあんなに染みるんだよ、と言うくらい広範囲に広がっていた。

しかも捲ったときに見えた傷の量がとてつもなく多くて。


“アイツの力になりたい”

そう思ったが、所詮ずっと連絡も取り合わず昨日“偶然”同じ高校になって“偶然”再開したくらいの仲。

“そんな奴に相談なんて出来るわけがない”そう思った俺は毎日アイツの家に行こうと決めた。

たとえ拒まれたとしても。

それで本当に嫌で思いつめているようだったらもう辞めよう。

そう決めて。