「その腕、、」

『え?』

彼のいう“腕”即ちそれは私の腕。

それを見た私も驚いた。

だって、付けていた“白色”のリストバンドに血が染みていたのだから。


…それも濃く、広くに広がっていた。


お皿を洗うため、袖を捲ってしまっていた。

そのせいで見えてしまっていたのだ。

『あっ』

隠してももう遅い。そんなこと分かってる。

、、けど隠さずにはいられなかった。



だが、翔に腕を掴まれリストバンドを捲られてしまった。

『だめっ』

抵抗も虚しく彼に今日つけた傷を見られてしまった。

否、今日だけではない。その前の傷跡だって。



掴まれた左手を引っ張り彼の手から抜け出し、寝室に駆け込んだ。

急いで鍵を閉め、彼が入ってこられないようにした。


あまり力強く握られていなかったのと寝室に鍵がついていたのがが幸いだった。


扉の前で体育座りをし、顔を伏せていた私。

“傷”を見た彼はどう思っただろう。

軽蔑するだろうか。

せっかく話せたと思ったのに。

そんなことを考えていた。

一言で言えば“後悔”これ以外の何物でもないだろう。




いつの間にか朝になっていた。

彼が玄関から出ていった音がして安心して、そのまま眠ってしまったらしい。