4月10日 午後8時



春の肌寒い夜


大学生になりアパートに引っ越してきてから丸一週間が経ちつつあるわけだけど


私はまだ一度も、隣の部屋の住人を見かけたことがなかった



綺麗な青い包装紙に包まれた菓子折りを持って玄関前に立ち、毎晩インターホンを鳴らすも部屋の主は不在


もしかしてこの部屋は物置のように使われているだけで、人は住んでいないのだろうか


そう思って今日もため息をついて踵を返しかけた時



「うちに何か用ですか」


背の高いスーツの男性に、背後から声をかけられビクッと肩をすくめる


そして

思わず振り返り咄嗟に彼の顔から目をそらした時


後ろでに持つ大きなスーツケースが目に入り、私ははっと息を飲んだ


そっか

それでずっといなかったのか.....


「あの、私」


顔を上げて彼を見る


すると目に飛び込んできたのは


綺麗で、色白で、長身で


この世の全てを見透かせそうな鋭い瞳を持った大人の男性だった