と慌てると、崇さんは顔を上げて「ま、確かに」と笑った。
その顔を見て、今更ながらに、この人はモテるんだろうな……と思った。
出会った当初は、年上に見えなくて、言動も子供っぽい気がした。
でも、たった2週間しか縁のない私のために一生懸命になってくれて、
そういう姿を見ると、誰でも少しくらいキュンとすると思う。
「親父さんが美味しいって言ってくれるといいな」
「はい」
それじゃ、と片手を上げて、崇さんは出て行く。
また明日にでも会えそうな、そんな軽い別れ。
もう2度と会えないという現実に、私の心はぽっかりと穴が開いたようだ。
それなのに、崇さんは何とも思ってない。