「オレが家政夫するのもあとちょっとだけど、できれば好物食わせたいし」


「あ、ありがとうございます」


なんだか照れくさく、話をそらした。


「そういうお父さんの好きなものは何なんでしょう」


「親父さん?」


「はい。知っていたら、お父さんの好きなものを作れたのになーって」


私はお父さんのことを何も知らない。


何が好きで、何が嫌いで、休日には何をするのか。


それさえも知らない。


「オレも知らないなあ。そっちもリサーチしておけば良かったか」


「いえ、いいんです。今はわかりませんが、ちょっとずつ知っていけたらと思うんです」