「おー、美味しいって思ってもらえるのは作り甲斐あるし、嬉しいよ。ありがとな」


崇さんは私の頭をポンポンと優しく叩いた。


優しさが嬉しいのに、別れが近づいている今は優しくされればされるほど辛い。


でも、顔には出さないように、笑顔を心がけた。


「でも、まずったなー」


崇さんが歩き出し、私も続いた。


「何がですか」


「実は今日は茜の好きなものでも作ろうと思ってたんだよ」


「え、そうなんですか。それは何というかすみません」


「いや、事前に確認しなかったオレも悪い」


 崇さんは笑いながら首を横に振った。