「ご、ごめんなさい。携帯灰皿持ち歩いてるなんて律儀だなって思って」


見かけによらず、という言葉は飲み込んでおく。

ケンカを売りたいわけじゃない。


少年は不機嫌そうな声を出す。


「あー……ダチにもだっせえって言われるけど、客先でタバコ捨てたらババアにどやされる」

「ば、ばばあ?」


「うちの母親。ほら、おまえも知ってるだろ。コンノ家政婦紹介所の所長」

「所長さん」


ある女性の顔が脳裏に浮かぶ。


数年前、いつもお世話になっている家政婦の今井(
(いまい)さんが風邪で休んだとき、

代わりの家政婦として所長さんが来てくれたんだ。