「茜……」


「お祝いとか、そういうのだったら、なおさらいらないから。余計なことしないで」


私はお父さんを置いて、当てもなく歩き出す。


冷静になれば、お父さんの車で来たのだから一人では帰れないとわかっただろうに、

今はただ、お父さんの顔を見たくなかった。


後ろから追いかけるように「あか――」と私を呼ぶ声が聞こえても、

答えるつもりはなく足を緩めなかった。


その後に続いたのは私の名前の続きではなく、ドサッという大きな音だった。


まるで、何かが倒れたような、そんな音。


足が止まる。


今の音は何?


私は不審に思って振り返った。


そこにはさっきまでいたはずのお父さんの姿がなく……いや、いた。


地面に倒れ伏していた。