「お帰り」

「た、ただいま」


そっとリビングの扉を開けて、中をうかがうようにして部屋に入ると、すぐに声をかけられた。


お父さんはリビングのテーブルでノートパソコンを開いて、何か作業をしていたようだ。


顔を上げ、私を見る。


「今日は遅かったんだな」


「えーと、いつもこんな時間だよ。閉店間際に入ってきたお客さんが何組かいたけど、崇さんがバイクで送ってくれたし、むしろいつもより早いかも」


「そうか……いつも遅くまで働いているんだな。お疲れさま」


「ありがとう。でも、お父さんほどじゃないし」


「まあ、それもそうだな」


お父さんの口元が微かに緩んだ気がした。


笑った……のだろうか。