「私が見てきます」


そう言ってリビングを出ると、すぐそばの玄関で予想通りの人が靴を脱いでいた。


その人はリビングのドアを開ける音に気付いたのか、顔を上げる。


目があった。


久しぶりに見た顔は、目じりの皺が増えている気がする。


「ただいま」


低い声が空気を震わせ、私は唾を飲み込む。


「お、お帰りなさい。お父さん」


なんとか声を絞り出した。


そこにいたのは、いつぶりに会うのかも覚えていない私のお父さん、桂木学(かつらぎ まなぶ)だった。