私はよく、悩み事のない様に見えると言われた。

手前がそう感じているのは幸いであった。
私はそう振る舞っているのだから。

だが、私にも不安というものが存在した。

私は元々豪農の出だから、金で養子縁組を買ったのではないか、という噂があとを断たなかった。

それに対して私は認めてもらうために片っ端から、試合の依頼を受け、勝ち進んだ。

天然理心流特有のあの重い木刀を持つと、天才と称される剣術を披露することができた。

けれども、試合の前にはいつも、
負けた時のことを想像してしまい、
胸が締め付けられ、息苦しくなり、
終いには、手足の痙攣がとまらなかった。

それさえも
『いつか、試合中に症状が出て、怖じけ付いたと馬鹿にされるかもしれない。』
と、私の不安の種になった。