――戒斗――

………。

やっぱり、やめときゃ良かった。


「夢璃、それちょうだいっ♪」

「えぇー。夢璃もグラタン好きだもん。」

「知ってるっ!けど、俺も好きっ!」

「愁君、さっき食べてたじゃんっ!」

「もう食べたっ!」

「…じゃぁ、玉子焼きと交換っ!」


「…………。」

さっきからこの調子。


なんだ、この低レベルなやりとり…。
一緒に食わなきゃ良かったと後悔中。

見せつけてんのかコイツ…。
夢璃にはそんな気はないと思うけど。


「…はぁっ!」

桐谷がため息をついた。

「…気が失せる。」

遥香が言った。


「…はぁ。」

それでもため息をつく。

「…聞いてる?」

聞いてないだろうな、コイツ…。


「…はぁぁっ!」

「気が失せるって言ってんでしょ?
聞こえてないの?聞いてないの!?」

遥香が言った。