麗香が捧げ者となる紅祭りの日がやってきた。

私は、麗香の家にいた。

麗香はもうすでに白い服を纏っており、その姿は綺麗だった。

麗香のお母さんは、隷下の髪に櫛を入れながら涙を流していた。

麗香は、静かに目を瞑っていた。


私は、その様子をぼんやりと見ていた。


「ねえ、本当に?

本当に、儀式をしなくちゃいけないの?」


麗香のお母さんが言う。


「私じゃ駄目かしら?

麗香の代わりに、私が…!」

「お母さん」


穏やかな声で、麗香は言う。


「捧げ者に選ばれたのは、私なんだから…」

「でも、でもこんなのって…!」


崩れ落ちる麗香のお母さん。

今まで大切に育ててきた娘が、殺されるかもしれない。

何も、何も悪いことなんてしていないのに…。

どうして、麗香達がこんな目に遭わなくちゃいけないの?


「麗香、行かないでよ…」


私は、いつの間にか麗香にそう声をかけていた。


「ごめん、無理。

皆を犠牲にして、逃げるなんてこと…できないよ…」


そう言って、麗香は涙を流しながら笑った。